サーフィンの基礎である「テイクオフ」はサーフボードに立つことを意味します。サーフィンは「パドリング」と「テイクオフ」を極めることで良い波に上手に乗れるようになり、テイクオフを見ればその人のサーフィンとしての実力がわかるとも言われています。そのため初心者のうちにいかに癖のない、上手なテイクオフをマスターするかが重要となります。そこで、テイクオフの基本と上達のためのポイントをわかりやすく動画を交えて紹介します。
テイクオフの基本
テイクオフの基礎的な流れは「パドリング(パドル)→上体起こし→中間姿勢→スタンドアップ」になります。まず、パドリングを行い、波と同じスピードに持っていく必要があります。波に乗り始める際に体の重心を前に持ってきて、ボードのテール部分を波に押し上げてもらうイメージを持っていると、スピードが出やすくなります。ボードが上手く波のスピードに乗り始めたら自分の脇下くらいに腕立て伏せのように両手をつき、上体を起こします。この時、下を向いていると上体を起こすのに余計な力が必要となり、バランスを崩す要因になりますので「目線は前!」を意識しましょう。
お尻を上げ、体を前に持っているイメージで胸とボードの間に両足を入れます。この際に同時に体をひねり、横向きの体制を作ります。この上体起こしからの中間姿勢がボードのスピードを殺すことなく、スピーディーにできるかが重要となります。この体制までくればあとはバランスを保ちながら立ち上がるだけです。立ち上がると言っても、手を軽く放すくらいのイメージで、膝を曲げた中腰のような姿勢になります。この際には体の重心を動かさないことを意識するとバランスが保たれます。これがテイクオフの基本的な流れになります。
テイクオフで意識するべきポイント
では、テイクオフの基本が分かったところで、次はテイクオフの中で意識するべきポイントを紹介していきます。
スピード
テイクオフができる状態を作るためにはパドリングを行い、波のスピードに自分を合わせる必要があります。早すぎるとブレイクした波にボードが飲まれてしまいますし、遅すぎると波においていかれてしまいます。初心者はどうしてもパドリングが上手くいかず、波に遅れがちになります。上手い人になればなるほど、数回のパドリングでも充分なスピードに乗ってテイクオフを成功させます。コツは浅く遠くまで(腰の辺りまで)漕ぐことと背中を反らずに体重を前にかけることを意識することです。
手の位置
手の位置が前過ぎると上半身が起き上がらず、足を前にうまく持ってくることができません。逆に後ろ過ぎると力が入らずに、この場合も上半身をスムーズに起き上がらせることができません。また初心者がよく陥るのがレールを掴んでしまうことです。レールを掴んでしまうとスムーズに手を放すことができません。手は脇下胸当りに腕立て伏せのように肘を開きながらつくのが理想とされています。
足の位置とボードの重心
サーフィンではカラダの重心が後ろにかかっているとブレーキがかかってしまい、スピードが出ません。ボードの重心よりも前に体の重心を持ってくる必要があり、そのためには前足の位置をボードの重心よりも前の位置にします。そうすることで体の重心を前に持ってくることができます。また、体が正面を向いていると、重心が後ろになってしまうので、必ず、中間姿勢の段階から体は横向きになっていることを意識しましょう。
姿勢
テイクオフでは姿勢が重要と言われますが、それはテイクオフの立つ直前の中間姿勢の状態を指します。中間姿勢の際に体の重心がボードの重心に対して左右中心、少し前掛かりの状態になっているかどうかがポイントになります。スタンドアップの際には中間姿勢から重心を動かさないことを意識しますが、中間姿勢の際の重心が正しくないと必ずバランスを崩してしまいます。中間姿勢が安定してできるように陸トレを繰り返しましょう。
膝
テイクオフは上手い人程膝がやわらかいと言われます。これは膝の曲げ伸ばしで体の重心を動かしバランスがとれている証拠です。中間姿勢からスタンドアップの時に膝は曲げている状態ですが、人は膝を曲げたままでは自然と重心は前にいってしまうので、上半身が前かがみにならないように意識しましょう。そこからは膝の曲げ伸ばしで重心操作することを意識しましょう。
テイクオフの練習
テイクオフについてしっかりと学んだので、次は実際にテイクオフができるようになるための練習方法を紹介します。テイクオフのトレーニングには3段階あります。
【その1】陸トレ―ニング
まず、テイクオフの基本の流れを体に覚えさせるために陸の上で練習します。この陸トレーニングを怠れば、テイクオフを成功することは不可能といっても過言ではありません。方法はボードの上にうつ伏せになり、その状態から「上体起こし→中間姿勢→スタンドアップ」の動きを練習します。ここで繰り返し練習することで、手や足の位置、中間姿勢になる速さを極めておきます。下に段ボールなどを置いて、少し不安定な所で行うのも有効的です。
【その2】スープで練習
陸トレが終われば実際に海に入っての練習ですが、まだ実際の波にトライするのは早いです。先に、浅瀬のスープ(波がくずれた後に出来る白い泡状の波)で練習します。ここでは陸トレで練習した一連の動作を海の中でもできるようになることが目標です。実際の波に比べて不安定さやスピードなども状況は大きく異なりますが、まずは海の中で実際にできる感覚を掴めるようになりましょう。
【その3】本番の波で実践
スープでテイクオフができるようになったら、いよいよ実際の波に挑戦しましょう。初心者の方は他のサーファーの方々の邪魔にならないように間隔をとって練習するようにしましょう。可能な限り崩れていない、スピードのある波で練習すると良いでしょう。
上級者のテイクオフテクニック
上級者になればなるほど、「いかにスピードを殺さないか、むしろいかに加速するか」を意識してテイクオフに磨きをかけています。彼らはそのために「プッシュアップテイク」という技を駆使します。簡単に言えば「ボードを押しながら立ち上がる」という技です。
ボードが波に持ち上げられたり、上体を起こし過ぎて重心が後ろになってしまうのは減速の原因になります。そのため、上級者は頭の位置を固定し、腕全体でボードを波に沈める「プッシュアップテイク」を駆使します。
テイクオフはサーフィンの基礎中の基礎ですが、極めることでサーフィンの幅を広げることに繋がるので、初心者のうちに正しいテイクオフを身につけるようにしましょう。