海を挟んだ遠い向こう岸まで、船や橋を使わなくても移動できる、便利な海底トンネル。
しかし、この海底トンネルがどうやって作られているか、ご存知の方は少ないのではないでしょうか?
そこで今回は、この海底トンネルの作り方について解説していきます。
海底トンネルとは
海底トンネルとはその名のとおり、海底をくぐる形で作られたトンネルです。
海底トンネルは、海を挟んで向かい合っている陸地同士をつないでおり、主に鉄道や車道として利用されています。
形状は、中央部が下方向にふくらんでいる逆アーチ型に近い形をしています。
これは入り口と出口が陸地にあり、そこから海底のさらに下に向けてトンネルが掘られているためです。
日本の海底トンネルでは、東京湾を横断している「東京湾アクアライン」が有名です。
海底トンネルが作られるようになった経緯
先ほども説明したとおり、海底トンネルは海を挟んで向かい合っている陸地同士を結ぶためのものです。
陸地同士をつなぐものには、橋もあります。
しかし船が通る場所では、橋には以下のようなデメリットがあります。
- 航行の邪魔になってしまうため、あまり数を増やせない
- 船がぶつからないように、高い位置に設置しなければならない
- 空港近くには設置できない
橋は海の上に架けられますが、海では船が航行しています。
橋の数が多いと、航行の邪魔になってしまうのです。
また、橋を低い位置にかけると、船が橋の下を通れず、衝突してしまいます。
これを防ぐためには、橋を高い位置に設置するしかありません。
しかし高い位置に橋を架ける場合、橋の面積が必要になるぶん、工事費用も高くなってしまうのです。
さらに空港の近くに橋をかける場合、船の邪魔にならない高さに橋を架けると、今度は飛行機が安全に離着陸するために必要な「高度制限」に抵触してしまうというデメリットもあります。
こうした背景があり、橋の代わりに採用されるようになったのが海底トンネルです。
海の底に作られる海底トンネルなら、船の航行の邪魔になることもありません。
ただし海底トンネルは、橋に比べて工事費用が高くなっています。
そのため海底トンネルが採用されるのは、ここまで説明してきたような事情がある場合に限られます。
世界初の海底トンネルは日本にあった
世界で最初に作られた海底トンネルは、なんと日本にありました。
世界最初の海底トンネルが、関門海峡をつなぐ「関門トンネル」です。
関門トンネルが完成したのは1942年(昭和17年)で、当時は太平洋戦争の真っ只中でした。
関門トンネルは当初、貨物営業の目的で作られました。
その後、開通した年のうちに旅客営業も始まっています。
現在では鉄道トンネルだけでなく、車道トンネルや、人が歩ける「関門トンネル人道」もあります。
海底トンネルはどうやって作られる?
先ほども説明したとおり、海底トンネルは海底をくぐる形で作られています。
海底にどうやってトンネルを作っているのだろうと、気になっている人もいるでしょう。
海底トンネルは、主に以下2種類の作り方があります。
- 通常工法
- 沈埋工法
ここでは、それぞれの海底トンネルの作り方について説明していきます。
海底トンネルの作り方①通常工法
「通常工法」は、陸地に作るトンネル同様、海底の下を掘削していく工法です。
通常工法では、海底のさらに下の地盤にトンネルを掘っていきます。
出典:ものしり博士のドボク教室
この工法では、入り口から出口に至るまで、海を通ることがないため、海の中で作業をする必要がありません。
東京湾アクアラインや青函トンネルの工事では、この通常工法が用いられました。
海底トンネルの作り方②沈埋工法
「沈埋工法」は、トンネルの部品を海に沈めてから、海中で組み立てるという工法です。
沈埋工法では、陸で「トンネルエレメント」と呼ばれる円筒の構造物を作っておきます。
その後、トンネルエレメントを事前に掘削しておいた海底の溝に埋め、複数のエレメントを海中でつなげていきます。
トンネルをつなぎ合わせた後、トンネル内部の水を抜けば、工事は完成です。
まとめ
海底トンネルは、海を挟んで向かい合った陸同士をつなげるため、海底に作られるトンネルです。
海底トンネルの作り方には、海底の下の地盤を掘る通常工法と、海中にトンネルのパーツを沈めてから組み立てる沈埋工法があります。
海底トンネルを使えば、船や橋を使わずに、向こう岸まで渡れます。
近くに海底トンネルがあるという方は、ぜひ積極的に活用しましょう。